大判例

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広島高等裁判所 昭和25年(ナ)3号 判決

原告 平尾喜資 外一名

被告 上根政幸

一、主  文

原告等の訴を却下する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、事実及び理由

本件訴状によれば、原告等は昭和二十五年六月五日施行の参議院議員通常選挙に当り、鳥取縣地方区選出議員に当選した中田吉雄は、公職選挙法第二百二十一條第一項の二同法第二百二十二條による利益誘導並びに事前運動禁止違反等に牴触したるに依りこれが当選を無効とするとの判決を求め、その請求原因たる事実関係は、(一)中田吉雄は鳥取縣会議長在職中自己の参議院議員立候補を有利に展開し当選を得る目的で、昭和二十五年二月同縣議会において日本教職員組合の強力なる支持を受くることを伏線とし、全国稀有とする給與の昇給を多数反対を押切つて強行に可決支給せしめた。(二)同人は立候補選挙運動中その掲げる政策の中に「標準義務教育法案」は教育を壞滅する惡法なりと絶叫し断固否認し、同法案が国会を通過可決された曉には、教職員と学生生徒並にその父兄母姉の蒙る損失は甚大であり爲めにこの法案の通過を断固阻止しこの重大危局に逢着する義務教育の健全性を求めねばならぬと随時随所で所懐を宣言し、右法案に対する充分な認識を欠く全教職員と子弟教育に関聯する大多数の父兄母姉保護者等を愚弄して支持共鳴を求め、支持団体の一劃主流をなす日教組鳥取縣支部高、中、小学校教職員約六千三百人を動員し、帰郷作戰と呼称し以て一人十票獲得の大運動を実行せしめ、尚又同人を支持投票することの盟約署名運動をし、その家族による個々面接訪問によつて投票依頼をしたことは、公務員法違犯であり教職員に対する利害供與誘導の最も顕著な事柄である。(三)本年六月十日前後鳥取縣下義務教育課程の各小学校の教職員が中央の指令で全国小学校長会長により右法案の速な制定を要望する「教師と父兄」の加盟連署する署名運動を実施した事実は、明かに大多数の教職員学童並にその保護者等が中田吉雄に欺瞞され詐欺的行爲により尊嚴な投票行使を誤らせたものであつて、全く選挙権の強奪である。(四)同人は本年五月一日縣会議長辞任の挨拶状葉書三万枚を印刷し同日投函郵送した。これ全く選挙用はがきの枚数制限不足を補填する爲めの企図であるから、公職選挙法第百二十九條に該当する違犯行爲である、というのである。

よつて按ずるに公職選挙法第二百八條第一項の規定によれば、参議院職員の当選の効力に関する訴訟は、同法但書の場合を理由とするものを除き当選をしなかつた者が原告となり、当選人を被告として提起せねばならぬ。然るに本訴は昭和二十五年六月五日施行の参議院議員の選挙において、鳥取縣地方区選出議員として当選した中田吉雄の当選を無効とする判決を求むるもの即ち当選の効力に関する訴訟であつて而も同法但書の場合を理由とするものでないことは本件訴状記載の請求の趣旨及び請求の原因によつて明らかであるに拘らず原告等が立候補した者でなく從つて当選しなかつた者でないことは当裁判所に顕著であるから原告等は本訴を提起するにつき正当な当事者適格を有しないのみならず正当でない被告鳥取縣選挙管理委員会委員長を被告として本訴を提起したものであるから本訴は不適法である。本件はこの点において既に裁判をするに適するから民事訴訟法第二百二條に則り原告の訴を却下することとし、訴訟費用の負担については同法第八十九條の規定を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 小山慶作 井上開了 宮田信夫)

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